百名山 アーカイブ - 地球を感じる山登り 山の成り立ちを地質学から読み解く登山ブログ Mon, 05 Oct 2026 01:50:01 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=7.1.3 https://chikyu-yama.online/wp-content/uploads/2026/04/favicon_tozan-150x150.png 百名山 アーカイブ - 地球を感じる山登り 32 32 十勝岳が噴火警戒レベル3に——規制は火口から3km、でも100年前は25km先で144人が亡くなった https://chikyu-yama.online/tokachidake-level3-lahar/ https://chikyu-yama.online/tokachidake-level3-lahar/#respond Wed, 16 Sep 2026 13:44:40 +0000 https://chikyu-yama.online/?p=2593 十勝岳の噴火警戒レベルが9月12日に3へ引き上げられました。規制されるのは火口から3kmですが、100年前の噴火では25km先まで泥流が届き144人が亡くなっています。この差を生むのが雪です。気象庁の判定基準表には、十勝岳のレベル4の条件として「積雪期」と書かれています。

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十勝岳の噴火警戒レベルが、9月12日9時30分に2から3へ引き上げられました。噴火警戒レベルは1から5の5段階で、3は「入山規制」にあたります。62-2火口から概ね3kmの範囲に立ち入れなくなりました。十勝岳で噴火警戒レベルの運用が始まったのは2008年12月で、それ以降3に達したのははじめてです。

この記事で書くことは3つです。①引き上げの根拠は、8月17日以降に増えた「揺れの大きな火山性地震」であること。②規制されているのは火口から3kmですが、十勝岳はちょうど100年前に、25km先まで泥流を届かせた山であること。③そして判定基準表のレベル4の欄には、火山の活動ではなく「季節」が条件として書かれていること。3つ目が、これからの季節にいちばん効いてきます。

十勝岳の火口から3kmの立入規制範囲と、1926年の泥流が上富良野方面へ流れ下った経路を示す地図
赤い円が今回の規制範囲。茶色の帯が100年前に泥流が流れ下った谷(出典:国土地理院)

いま十勝岳で何が起きているのか?

気象庁の報道発表(2026年9月12日、札幌管区気象台)には、引き上げの理由がこう書かれています。「十勝岳では、熱活動が高まった状態が続く中で、8月17日以降、山体付近を震源とする振幅の大きな火山性地震が増加しています」。振幅とは揺れの大きさのことです。

同じ資料から、変化は3つに整理できます。山頂近くの62-2火口と振子沢噴気孔群のあたりで、地面から出る熱や噴気が強まっていること。今年4月以降、二酸化硫黄の放出量が増えていること。これはマグマに溶けていたガスで、量が増えるのはマグマが浅いところまで上がってきたときの目安になります。そして8月17日以降、山体付近の地震が増えていること。

ただし気象庁は、噴火が近いとも、噴かないとも書いていません。レベルを上げた理由を説明しているだけです。火山活動が高まってから、噴火せずに静かに収まることもあります。

レベルは数値の基準で決まっている

噴火警戒レベルは、担当者の印象で上げ下げされるものではありません。火山ごとに数値の基準が公表されていて、十勝岳のレベル3は、まず「噴煙・噴気の高さの増大や火口温度の明瞭な上昇、またはそのいずれかの高い状態が認められている中で」という前提があり、そのうえで「硫黄沢観測点で最大振幅2μm以上の火山性地震が増加(30日積算で5回以上)」と書かれています。あるいは、その地震が起きている中で山が膨らむような地面の動きを観測した場合です。熱の高まりが前提で、そこに地震が加わって初めて条件を満たします。

2μmは、地面が1000分の2ミリ揺れるという意味です。人には感じられません。その揺れが30日間で5回に達したかどうかで、3km圏内に人が入れるかどうかが決まります。

ひとつ下のレベル2の基準は「火口直下で火山性地震が150回/24時間を超える」です。回数だけ見ると2のほうが厳しく見えますが、こちらは揺れの大きさを問わない小さな地震の数え方で、レベル3は「2μm以上」という大きさの条件が付きます。小さな地震がたくさん起きるより、大きな地震が少し起きるほうが重く見られている、ということです。

「3km」の中には何があるのか

気象庁が3kmの範囲で警戒を呼びかけているのは、噴火に伴って弾道を描いて飛ぶ大きな噴石です。火山灰のように風に流されるものではなく、砲弾のようにまっすぐ飛んでくるので、風向きに関係なく円形に設定されます。

この3kmの中に、人の住む場所はありません。気象庁が示した火口の位置から直線距離を測ると、十勝岳温泉で約4km、主要な登山口の望岳台で約5.5km、白金温泉で約5kmです。いずれも規制の外側にあります。ふもとの市街地はさらに遠く、上富良野で約18km、富良野と美瑛で約26kmです。

つまり今回の規制は、山に登る人に向けたものです。ふもとで生活する人や、旅行で富良野・美瑛を訪れる人が、いま何かを変える必要がある段階ではありません。

ではなぜ100年前は25km先で144人が亡くなったのか

ここで話が変わります。1926年5月24日、十勝岳の噴火で亡くなった人は144人でした。犠牲が出たのは、火口から25km離れた上富良野の原野です。さきほどの3kmとは桁が違います。

この日の午後4時18分ごろ、火口の中にあった中央火口丘の北西部が壊れ、高温の岩なだれが斜面を流れ下りました。5月の十勝岳にはまだ雪が残っています。熱い岩なだれが残雪の上を通ったことで雪が一気に溶け、水と土砂が混ざった泥流に変わりました。これを融雪型火山泥流と呼びます。

融雪型火山泥流のしくみを示す3段の断面図。雪の積もった山で噴火が起き、高温の噴出物が通った筋の雪だけが溶け、泥流となって谷を下り集落に達する
溶けるのは噴出物が通った筋の雪だけ。それでも水の量は谷を埋めるほどになる

泥流が速くなるのは、水と土砂が混ざると流れやすい重いものに変わるからです。土砂だけなら斜面の途中で止まりますが、水が入ると粒どうしがすべりやすくなり、遠くまで流れます。かといって水ほど軽くはないので、勢いがついたまま建物を押し倒す力を持ちます。雪は、その水を山の上に大量に貯めておくものにあたります。

内閣府の災害報告によれば、泥流は爆発から25〜26分で火口から25km離れた上富良野の原野に達しました。時速にすると60km近くになります。上富良野と美瑛の2村が埋まり、建物372棟が失われ、負傷者も約200人にのぼりました。噴火の規模そのものよりも、そこに雪があったことが被害を大きくしたのだと読めます。

噴石は3km、泥流は25km。同じ噴火でも、雪があるかないかで危険の届く範囲がまったく変わります。ここが十勝岳という山の性格です。

判定基準に「積雪期」と書かれている意味

そのことは、気象庁の判定基準表にもはっきり出ています。十勝岳の基準表(令和3年3月26日現在)のレベル4の欄には、こう書かれています。

【居住地域に被害を及ぼす噴火の可能性】
積雪期に噴火警戒レベル3の判定基準を満たした場合

レベル4は「高齢者等避難」にあたる段階です。引き上げの条件として書かれているのが、火山活動そのものの変化ではなく「季節」だという点に目が留まります。十勝岳の判定基準表を、レベルごとに一行ずつ要約するとこうなります。

レベルとるべき行動十勝岳で引き上げの条件になるもの
5避難泥流や火砕流が発生、または切迫している
4高齢者等避難積雪期にレベル3の条件を満たした場合
3入山規制熱活動が高い中で、2μm以上の地震が30日で5回以上(今ここ)
2火口周辺規制火口直下の地震が24時間で150回を超える、など
1活火山であることに留意—
気象庁の判定基準表から要約。レベル4だけ、条件に季節が入っている

これは基準表の読み方の問題ではありません。地元の自治体と気象台などでつくる十勝岳火山防災協議会の「十勝岳火山避難計画」(令和6年6月改定)には、こう明記されています。

積雪時には、居住地域に重大な被害を及ぼす融雪型火山泥流の切迫性を考慮し、迅速な防災対応を可能とするため、噴火警戒レベル3の判定基準を満たした段階で、噴火警戒レベル4に引き上げる。

同じ計画は、通常の段階の踏み方についてもこう書いています。「非積雪期には噴火警戒レベル3から噴火警戒レベル5に引き上げられること、積雪期には噴火警戒レベル2から噴火警戒レベル4に引き上げられることが基本となる」。雪のある時期は、レベル3を飛ばして2から4へ上がるのが基本だ、ということです。

つまり、いま起きていることが雪の季節まで続いた場合にどう扱うかは、すでに計画として決めてあります。ただし計画には「火山の活動状況によって、妥当と評価できる場合は、非積雪期に噴火警戒レベル4を積雪期に噴火警戒レベル3を発表することはあり得る」とも書かれていて、自動的に決まるわけではありません。

ふもとで暮らす人、旅行する人はどうすればいいか

いまの段階で生活を変える必要はありません。規制は3km圏内だけで、市街地はそこから15km以上離れています。富良野・美瑛の観光も通常どおりです。

ただ、雪が積もる前に一度だけしておくと違うことがあります。住んでいる市町村が出している火山防災マップを見て、泥流が流れる想定の谷がどこか、自分の家や職場がその外にあるかを確かめておくことです。1926年に被害が出たのは、火口から遠い平地でした。距離ではなく、谷筋の内か外かで話が変わります。

この100年で、砂防設備の整備や監視体制は当時とは比べものにならないほど進んでいます。避難の呼びかけも、当時はなかった仕組みです。100年前と同じことが同じように起きる、という話ではありません。

登山者はどう受け止めればいいか

3kmの範囲には入れません。望岳台から山頂へ向かう道も、新得町側の登山口から先も規制の中に入りました。十勝岳は日本百名山なので、この秋に登る計画を立てていた人は少なくないはずです。私も百名山を70座ほど登ってきて、十勝岳はまだ残っている一座でした。登れない山の判定基準表をわざわざ読んだのは、そういう事情もあります。

読んでみて、ひとつ実用的だと思ったことがあります。雪のある時期に活火山へ登るときは、レベルの数字だけでなく、その山の判定基準表を一度見ておくと景色が変わります。どの現象を警戒しているかが火山ごとに違うからです。十勝岳の場合は、それが泥流でした。

火山の山は、こちらの都合とは無関係に閉じたり開いたりします。噴火警戒レベルがどう決まり、山がどう「還ってくる」のかは火山で登れなくなる百名山にまとめました。活火山という区分そのものについては活火山とは何かに書いています。

この記事は9月16日時点の発表に基づいています。状況は変わるので、気象庁と地元自治体の最新の発表を必ず確認してください。

山ごとの成り立ちは、カテゴリ「山の地質」でも一座ずつ書いています。

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火山で登れなくなる百名山——噴火警戒レベルと入山規制、そして山が「還ってくる」までの全記録 https://chikyu-yama.online/hyakumeizan-volcano-restrictions/ https://chikyu-yama.online/hyakumeizan-volcano-restrictions/#respond Sat, 18 Jul 2026 01:14:36 +0000 https://chikyu-yama.online/?p=1595 百名山のうち23座は噴火警戒レベルが運用される活火山です。レベルの仕組み、入山規制を決めているのが気象庁ではなく市町村長であること、そして規制解除=山が「還ってくる」までの実際の道のりを、御嶽山の9年を軸に解説します。

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日本百名山100座のうち23座は、気象庁が噴火警戒レベルを運用する活火山です。このうち2026年7月時点で、阿寒岳(雌阿寒岳)・十勝岳・岩手山・阿蘇山・霧島山(新燃岳)の5火山がレベル2(火口周辺規制)にあり、登山ルートに実際の影響が出ています。この記事では、警戒レベルの仕組みと、あまり知られていない「山を閉じ、山を開いているのは誰か」を解説し、23座の現況を一覧にします。

なお2026年9月12日、十勝岳はレベル3(入山規制)へ引き上げられ、火口から概ね3kmが立入規制になりました。その経緯と、十勝岳の判定基準に書かれた「積雪期」という条件については十勝岳が噴火警戒レベル3ににまとめています。

先にこの記事の要点を3つ。①「レベル1=安全」ではないこと。②レベル3の名称は「入山規制」ですが、山を閉じる法的権限を持つのは気象庁ではなく市町村長であること。③だから、レベルが下がっても山はすぐには開かないこと——御嶽山では、レベル1への引き下げから山頂再開まで13カ月、すべての登山口が開くまで噴火から9年かかりました。

※規制情報は変わります。本記事の現況は2026年7月14日確認時点のものです。入山前には必ず気象庁の火山情報と自治体の発表を確認してください。

噴火警戒レベルとは何か?——「レベル1=安全」ではない

噴火警戒レベルは、気象庁が全国49の火山で運用している5段階の指標です(2007年開始)。登山者に関係が深いのは1〜3です。

レベルキーワード登山者にとっての意味
1活火山であることに留意原則登山可。ただし火口付近などに規制が残る山もある
2火口周辺規制火口から概ね1〜2kmが立入規制。山頂が圏内なら登頂不可
3入山規制登山禁止。規制は概ね2〜4kmに拡大
4・5高齢者等避難・避難居住地域に危険が及ぶ段階。登山の議論の外

レベルの上げ下げを判断するのは気象庁の火山監視・警報センターで、根拠は観測データです。たとえば御嶽山の公表基準では「火山性地震が24時間に50回以上」「山体の膨張を示す地殻変動」などがレベル2への引き上げ条件になっています。つまりレベルとは、地下のマグマや熱水の「ざわつき」を数値で翻訳したものです。

忘れてはいけないのは、2014年の御嶽山噴火(死者・行方不明63名、戦後最悪の火山災害)がレベル1のまま起きたことです。当時、火山性地震は基準を超えて増えていましたが、山体膨張が観測されずレベルは据え置かれました。この教訓から噴火速報の新設や判定基準の公表が進みましたが、「レベル1は安全宣言ではない」という事実そのものは今も変わっていません。私が夏の御嶽山で山頂直下の噴火跡に立ったときも、警戒レベルは1でした。レベル1とは「地球が静かにしている」という観測結果であって、「明日も静かにしている」という約束ではありません。

御嶽山山頂直下に残る2014年噴火の痕跡
初秋の御嶽山山頂直下。2014年噴火の痕跡が残る一帯は、この日「レベル1」でした。数字の意味を体で理解した場所です。

「入山規制」を決めているのは、気象庁ではない

意外に思われるかもしれませんが、レベル3の名称が「入山規制」であるにもかかわらず、気象庁に山を閉じる権限はありません。登山道を実際に閉じるのは、災害対策基本法63条に基づいて「警戒区域」を設定する市町村長です。警戒区域への立入は法的な禁止で、違反すると10万円以下の罰金または拘留の対象になります。ロープの向こうは「自己責任」の領域ではなく、法律の領域です。

そして市町村長が判断の拠り所にするのが、都道府県・気象台・火山専門家・警察消防などで構成される火山防災協議会(活動火山対策特別措置法で設置が義務化)です。気象庁のレベルは「あらかじめ協議会で合意した対応を起動するスイッチ」として機能します。まとめると、こうなります。

山が還ってくるまでの二段構造:気象庁のレベル引き下げと、火山防災協議会・市町村による規制解除
規制解除の二段構造。レベルを下げるのは「地球の観測」、山を開くのは「人間の合意」です。

山が「還ってくる」まで——御嶽山の9年

この二段構造が実際にどう動くのか。御嶽山の記録がすべてを教えてくれます。

2014年9月噴火。レベル3、火口から4kmを警戒区域に
2015年6月レベル3→2。協議会は「行方不明者の捜索が終わるまで火口2km以内は解除しない」と申し合わせ
2017年8月レベル2→1。しかし山頂は開かず。市町村は火口1kmの警戒区域を継続
2018年9月剣ヶ峰直下にシェルター3基を整備し、期間限定で4年ぶりに山頂再開(レベル1化から13カ月後)
2019年7月黒沢口からの剣ヶ峰登山が夏季の通常運用に
2023年7月犠牲が最も集中した八丁ダルミが9年ぶりに通行可能に(シェルター2基を新設)。全登山口から登頂可能へ
現在警戒区域は常設のまま、夏〜秋だけ登山道単位で緩和する方式。今季は7月10日〜10月14日

レベル1への引き下げは「地球が静かになった」という観測報告にすぎず、そこから捜索の完了、シェルター建設、登山道点検、雪解け、協議会の合意——人間側の宿題をひとつずつ終えて、山は少しずつ還ってきました。「レベルが下がったのになぜ登れないのか」という問いへの答えは、この表の中にあります。開くためには、閉じるよりずっと多くの準備が要るのです。

レベルと登山可否は一対一ではない——岩手山・浅間山・草津白根山

逆方向の例もあります。岩手山は山体深部の膨張を理由に2024年10月からレベル2が続いていますが、想定火口が山の西側に偏っているため、協議会の判断で2026年7月1日に東側4登山口(馬返し・焼走り・上坊・御神坂)だけが規制解除されました。レベル2のまま、山頂に登れます。西側のルートは引き続き閉鎖中です。

浅間山は「段階式」の分かりやすい見本です。レベル1なら実質的な山頂である前掛山まで、レベル2なら賽の河原分岐まで(黒斑山や火山館は可)、レベル3で登山禁止——と、レベルごとに「どこまで登れるか」があらかじめ決まっています。2026年5月にレベル1へ下がり、現在は約3年ぶりに前掛山まで登れます。

そして「レベル1でも登れない」代表が草津白根山です。湯釜付近はレベル1ですが、安全対策が整うまでとして草津町の立入規制が続き、湯釜見学は現在もできません。2018年に噴火した本白根山側に至っては、以来8年以上、登山禁止が続いています。レベルの数字だけを見て計画を立てると、この種の規制を見落とします。

百名山×噴火警戒レベル運用火山・全23座の現況

百名山のうち噴火警戒レベル運用中の23座の分布と現在のレベル
噴火警戒レベルが運用されている百名山23座(2026年7月14日時点)。赤=レベル2、橙=レベル1でも規制あり、青=レベル1(出典:国土地理院の地図を加工、レベルは気象庁発表)。

登山に影響がある山は次の7座です(2026年7月14日時点)。

山レベルいま、どこまで登れるか
阿寒岳(雌阿寒岳)2登頂不可。阿寒湖畔コース6合目・雌阿寒温泉、オンネトーコース7合目以上が立入禁止
十勝岳2登頂不可。火口から1.5km圏に山頂が含まれる
岩手山2山頂登頂可(東側4登山口のみ)。西側ルートは規制継続
阿蘇山2中岳第一火口から1kmが立入禁止。火口見学・中岳/高岳方面が規制
霧島山(韓国岳)2(新燃岳)韓国岳は大浪池・えびの高原側から登頂可。新燃岳方面の縦走路は不可(2011年から一度も全面再開していません)
草津白根山1湯釜見学不可(規制継続中)。本白根山は登山禁止が継続
御嶽山1剣ヶ峰は夏〜秋の緩和期間のみ登頂可(今季は10月14日まで)。ヘルメット携行を

残る16座——大雪山・岩木山・八甲田山・鳥海山・蔵王山・吾妻山・安達太良山・磐梯山・那須岳・日光白根山・浅間山(前掛山まで)・焼岳・乗鞍岳・白山・富士山・九重山——は現在レベル1で、通常の登山が可能です。ただしこの16座も「運用対象」である以上、いつでも表の上段に移り得ます。実際、浅間山・御嶽山・草津白根山はこの1年半の間にレベルが上下しました。この一覧は生き物です。

登る前の3ステップ

活火山の百名山に登る前の確認は、この順番が確実です。①気象庁の火山情報で現在のレベルと警戒範囲を見る。②山名+「入山規制」で自治体・火山防災協議会の発表を確認する(レベルと規制が一対一でないのは前述の通りです)。③登山届を出す——2024年施行の改正活火山法で、登山届の提出は「努めなければならない」と努力義務が強化されました。火口周辺に立つ日は、ヘルメットも。御嶽山や阿蘇では山麓でレンタルもあります。

火山の百名山は、確認の手間をかけてでも登る価値のある山ばかりです。噴火の仕組みや個々の山の成り立ちは、日本の火山ランキング、御嶽山の地質、焼岳の地質、安達太良山の登山記録で解説しています。規制が続く雌阿寒岳の麓には、微生物が鉱床を作るオンネトー湯の滝のような、火山ならではの見どころもあります。「山の地質」カテゴリもどうぞ。

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安達太良山 登山記録——ロープウェイで登る火山、「ほんとの空」と月面の沼ノ平 https://chikyu-yama.online/adatarayama-climbing-record/ https://chikyu-yama.online/adatarayama-climbing-record/#respond Wed, 08 Jul 2026 11:24:15 +0000 https://chikyu-yama.online/?p=1497 福島県の安達太良山は、ロープウェイで八合目まで一気に上がれる親しみやすい火山です。高村光太郎が詠んだ「ほんとの空」、乳首のような山頂、そして月面のような沼ノ平の爆裂火口——子ども連れでも楽しめる活火山の登山記録です。なぜあの巨大な火口ができたのかにも触れます。

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険しい岩稜の山が続いたので、今回はぐっと親しみやすい山です。福島県の安達太良山(あだたらやま)。標高1,700mの活火山で、日本百名山のひとつですが、なんといってもロープウェイで八合目まで一気に上がれるのが魅力です。子ども連れの家族でも、無理なく山頂をめざせます。

それでいて、見どころは本格的です。詩人・高村光太郎が『智恵子抄』で詠んだ「ほんとの空」、乳首のような独特の山頂、そして月面のクレーターのような沼ノ平の爆裂火口。手軽さと火山らしいダイナミックさが同居した、お得な山です。

安達太良山 奥岳登山口の標識
奥岳登山口。ここからロープウェイに乗れば、八合目まで一気に上がれます。背後になだらかな安達太良の山体が見えています。

ロープウェイで八合目・薬師岳へ

奥岳登山口からロープウェイに乗ると、わずか数分で標高1,350mの薬師岳まで運んでくれます。下から歩けば数時間かかる道のりを、座っているだけで上がってしまうのですから、文明の力はありがたいものです。登山というより空中散歩から始まる山、というのは子ども連れには心強いスタートです。

薬師岳の展望台には、「この上の空がほんとの空です」と刻まれた智恵子抄の記念碑が立っています。智恵子が「東京には空がない」と嘆き、ふるさと安達太良の空を「ほんとの空」と呼んだ——その一節で知られる場所です。実際に見上げると、確かに広く澄んだ空が広がっていました。詩の一節を知っていると、ただの青空が少し特別に見えてくるから不思議です。

乳首山と呼ばれる山頂へ

薬師岳から山頂までは、なだらかな稜線を1時間20分ほど。森林限界を超えると、低い灌木と岩礫の開けた道になり、火山らしい景色に変わっていきます。風が抜けて気持ちのいい稜線歩きです。

安達太良山の山頂は、遠くから見ると小さな突起がぽこんと飛び出した独特の形をしていて、「乳首山(ちちくびやま)」という親しみのある別名で呼ばれています。この突起は、火山活動でマグマが盛り上がって固まった溶岩ドームです。山頂直下には岩場もありますが、慎重に行けば子どもでも越えられる程度で、最後にひと登りすると1,700mの頂に立てます。

安達太良山の山頂標識と乳首山の溶岩ドーム
安達太良山の山頂。背後にぽこんと盛り上がっているのが「乳首山」と呼ばれる溶岩ドームです。火山活動でマグマが盛り上がって固まった証拠です。

月面のような沼ノ平の爆裂火口

安達太良山の最大の見どころは、山頂の先に広がる沼ノ平の爆裂火口です。稜線をたどって火口の縁に立つと、それまでの緑の景色が一変します。赤褐色の大地に白い岩盤がむき出しになった、直径約1.2km・深さ約150mの巨大なくぼ地。草木はほとんどなく、本当に月面のクレーターを覗き込んでいるようです。

安達太良山の火山地形が広がる稜線の展望
山頂周辺に広がる火山地形。緑の灌木の先に、赤茶けた火山の地肌と火口壁が見えています。同じ山とは思えないほど景色が切り替わります。

この穏やかでない景色には、痛ましい歴史があります。1900年(明治33年)7月、この沼ノ平で水蒸気爆発が起こり、火口内にあった硫黄の採掘所が壊滅して、72名もの命が失われました。今ものどかな観光地に見えて、安達太良山は気象庁が常時観測を続ける活火山です。火口周辺には立ち入りが規制されている区域もあり、ロープウェイで気軽に登れる山が、れっきとした生きている火山であることを思い出させてくれます。

なぜ巨大な爆裂火口ができたのか

沼ノ平のような爆裂火口は、水蒸気爆発によってつくられます。火山の地下にはマグマの熱があり、その熱で地下水が熱せられます。閉じ込められた水が一気に水蒸気へと膨張すると、その圧力で山体の一部を吹き飛ばしてしまう——これが水蒸気爆発です。マグマそのものが噴き出すというより、温められた水が爆発の主役になります。

水蒸気爆発で爆裂火口ができる仕組みの図解
水蒸気爆発で爆裂火口ができる仕組み。マグマの熱で地下水が熱せられ、水蒸気となって膨張し、山体を吹き飛ばして巨大なくぼ地を残します。

大量の岩石を吹き飛ばした跡には、すり鉢状の巨大なくぼ地が残ります。これが沼ノ平の正体です。同じ水蒸気爆発は、御嶽山でも起きており、火山の身近でありながら侮れない一面を物語っています。その12年前の1888年には、すぐ西の磐梯山で起きた水蒸気爆発が、北側の峰をひとつ崩しています。安達太良山を歩くと、ロープウェイの手軽さと、足元に広がる火口の迫力という両極端を、半日で味わうことができます。親しみやすい山の懐に、地球のエネルギーがしっかり潜んでいる——そんなことを実感できる火山です。


安達太良山はロープウェイを使えば子ども連れでも楽しめる、入門にうってつけの火山です。火山の成り立ちに興味がわいたら、御嶽山の地質や焼岳の地質の記事もどうぞ。ほかの登山記録は「登山記録カテゴリ」にまとめています。

投稿 安達太良山 登山記録——ロープウェイで登る火山、「ほんとの空」と月面の沼ノ平 は 地球を感じる山登り に最初に表示されました。

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