活火山とは何か——日本に111もある理由と、地図に浮かぶ「並び方の法則」

山の地質

活火山とは、「概ね過去1万年以内に噴火した火山」と「現在活発な噴気活動のある火山」のことです(気象庁の定義)。日本にはこれが111あります。ところで、昔の理科で習った「休火山」「死火山」という言葉を覚えていませんか。実はこの分類、今は公式に使われていません。この記事では、活火山の定義が「1万年」になった理由、111の分布図に浮かび上がる並び方の法則、そして「なぜ近畿と四国には活火山が1つもないのか」まで、気象庁と産総研の一次資料で解説します。

「休火山・死火山」はなぜ消えたのか

かつては「今噴いている山=活火山、休んでいる山=休火山、もう噴かない山=死火山」という3分類があり、富士山は長らく「休火山」と呼ばれていました。この分類が消えた理由は、年代測定の技術が進んで火山の寿命は人間の歴史よりはるかに長いと分かったからです。火山は数千年〜数万年単位で活動するので、数百年噴いていないことは「ほんのつかの間の眠り」にすぎません。歴史の記録だけで生死を判定するのは無意味だった、というわけです。

それを痛感させたのが1979年の御嶽山です。有史以来の噴火記録がなく「死火山」扱いだった山が、突然噴火しました。こうした経験を経て、気象庁(火山噴火予知連絡会)は2003年に現在の「概ね過去1万年以内」という基準へ定義を改めます。1万年噴いていなくても、次に噴く可能性を否定できないのが火山なのです。

御嶽山の山頂部に残る噴火の痕跡
御嶽山。「死火山」と呼ばれていた山は1979年に突然目を覚まし、活火山の定義そのものを書き換えるきっかけになりました。

111の分布図——並び方に法則がある

111の活火山を地図に打つと、バラバラではなくくっきりした帯になって並びます。北海道から東北の背骨を通る帯、富士山から伊豆諸島・小笠原へ一直線に南下する帯、九州から南西諸島へ続く帯。そして一目で分かるのが、近畿・四国の完全な空白です。

日本の活火山111の全分布図。帯状に並び近畿・四国には存在しない
日本の活火山111の分布(位置は気象庁カタログに基づく。出典:国土地理院の地図を加工)。列島に沿った帯と、近畿・四国の空白に注目してください。

この並び方の正体は、地下に沈み込むプレートです。海のプレートが日本列島の下に沈み込み、深さ100〜150kmに達したところでプレートから水がしぼり出され、マグマが生まれます。だから火山は「プレートがその深さに達した場所の真上」に、海溝と平行な列を作る。この火山列の最前線を火山フロントと呼びます。

沈み込むプレートが深さ100kmに達した真上に火山列ができる仕組みの断面図解
火山が帯状に並ぶ仕組み。海溝と火山列の間には「火山なし地帯」ができます。

では近畿・四国はなぜ空白なのか。この地域に沈み込むフィリピン海プレートは若くて温かく、浅い角度で沈み込んでいるため、マグマが生まれる深さまで十分に達していないから——というのが現在の説明です。関西に火山がないのに有馬温泉が異常に熱いのは、このプレートからしぼり出された熱水が直接上がってくるためだと近年の研究で分かってきました。火山の空白地帯にも、地下ではちゃんとドラマが進行しています。

活火山は「増えて」いる——77から111へ

活火山の数は、実は何度も変わってきました。

基準
1975年77噴火の記録がある火山など
1991〜96年83→86「過去およそ2000年以内」に拡大
2003年108「概ね過去1万年以内」に改定
2011年・2017年110→111調査の進展で追加選定

もちろん火山が新しく生えてきたわけではなく、増えたのは「人間の知識」の方です。噴火の記録は文書が残っているかどうかという人間側の事情に左右されますが、年代測定の進歩で、記録のない火山からも新しい噴火の証拠が次々見つかりました。基準を科学に寄せるたびに数が増えてきた、という歴史です。ちなみに2024年からは、新設された国の火山調査研究推進本部がこの111を正式に引き継いでいます。

数字で見る日本の活火山

最高峰富士山(3,776m)。2位は御嶽山(3,067m)
最北茂世路岳(択捉島)。カタログは北方領土の11火山を含む
最南日光海山(海底火山、山頂は水深392m)
海底火山山体がまるごと海面下の火山が9〜10ある
世界の中では世界の活火山は約1,350〜1,500。日本はその約7〜8%(政府資料では「約1割」)
24時間監視111のうち51火山を常時観測(今年3月に中之島が追加され50→51に)

国土面積は世界の0.25%しかないのに、活火山は約1割。あらためて日本は火山の国です。しかも「最南の活火山」が海の底というのは意外に知られていません。2021年に大噴火して軽石を関東の海岸まで届けた福徳岡ノ場も、小笠原の海底火山でした。ここまで読んで巨大な噴火の実力が気になった方は、日本の火山ランキングの記事でどうぞ。

いま「活動中」の火山はどれくらい?

活火山111といっても、大半は静かです。この記事を書いている時点で噴火警戒レベル3(入山規制)は桜島の1火山、レベル2(火口周辺規制)は雌阿寒岳・十勝岳・岩手山・阿蘇山・新燃岳・薩摩硫黄島・諏訪之瀬島の7火山。つまり登山に影響が出ているのは111のうち1割弱で、残りは「活火山であることに留意」しつつ普通に登れます。レベルは動きます——今年に入ってからも十勝岳と阿蘇山が1→2に上がり、口永良部島は2に上がって9日後に1へ下がりました。火山の山に登る前に気象庁の発表を確認する習慣だけは持っておきたいところです。規制の仕組みと百名山への影響は、近日公開予定の入山規制の記事で詳しくまとめています。

活火山のよくある質問

富士山は活火山?

正真正銘の活火山です。最後の噴火(1707年の宝永噴火)から約300年静かですが、火山の時間感覚では「つかの間の眠り」。しかも過去の噴火回数で見ると日本屈指の「よく噴く山」で、現在も24時間の常時観測対象です。

活火山でない山なら安心?

噴火の心配はほぼ不要ですが、「活火山でない=火山でない」ではありません。たとえば北アルプスの多くの山は火山ではありませんし、逆に立山のように活火山(弥陀ヶ原)を抱えた山域もあります。山がどちらのタイプかを知っておくと、山の見え方が変わります。

巨大なカルデラも活火山?

阿蘇・十和田・屈斜路など、多くのカルデラが活火山として数えられています。カルデラの記事で書いたとおり、カルデラは日本最大級の噴火の跡地。「凹んでいるから終わった火山」ではなく、中岳(阿蘇)のように現役で噴煙を上げているものもあります。

まとめ——111という数字は「知識の現在地」

活火山とは「概ね過去1万年以内に噴火した、または今も噴気を上げる火山」で、日本には111。並び方は地下のプレートが決めていて、近畿・四国の空白まで含めて理屈どおりです。そして77→111という数の変遷が教えてくれるのは、この数字が「火山の数」ではなく人間の知識の現在地だということ。次に基準や調査が進めば、112になる日も来るかもしれません。山の上で噴気や火口に出会ったら、1万年スケールの「生きている山」に登っているのだと思い出してみてください。

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