東尋坊や玄武洞で見られる、鉛筆を束ねたように六角形の柱がびっしり並んだ崖。あれは「柱状節理(ちゅうじょうせつり)」といって、溶岩やマグマが冷えて固まるときの縮みでできた地形です。自然が定規で引いたような規則正しさに、初めて見ると作り物を疑いたくなります。この記事では、柱状節理がなぜできるのか、なぜ六角形が多いのか、そして日本のどこで見られるのかを、図解と地図でわかりやすく解説します。
なぜ六角形の柱になるのか
カギは「冷えると縮む」という、ごくありふれた性質です。熱い溶岩が冷えて固まると、体積がわずかに小さくなります。表面全体が均等に縮もうとすると、あちこちに引っぱり合う力が生まれ、その力を逃がすために規則的なひび割れが入る。乾いた田んぼの泥がひび割れるのと同じ理屈です。

では、なぜ六角形が多いのか。縮みの力を最も効率よく逃がすには、割れ目が約120度の角度で交わるのが理想で、その結果できる形が六角形なのです。実際には五角形や不規則な形も混ざりますが、平均すると六角形に近づきます。そしてひび割れは、熱が逃げていく冷却面(溶岩の表面や地面)に対して垂直に、内部へ内部へと成長します。だから地面から垂直に立った柱の集まりになるわけです。
ちなみに柱の太さは、岩石の種類や冷え方で変わります。玄武岩のような溶岩では太めの立派な柱に、ゆっくり冷えるほど間隔の広い柱になる傾向があります。同じ柱状節理でも、太さや揃い方に「その溶岩がどう冷えたか」が刻まれています。
日本で柱状節理が見られる名所
柱状節理は火山や溶岩と縁の深い日本のあちこちで見られます。代表格を地図にまとめました。

東尋坊(福井県)は日本一有名な柱状節理でしょう。約1,200〜1,300万年前のマグマ活動でできた安山岩の柱が、荒々しい海食崖として約1kmにわたって続きます。国の天然記念物で、日本海の荒波に削られた迫力は唯一無二です。
そしてもう1か所、地学好きとして絶対に外せないのが玄武洞(兵庫県)です。ここは柱状節理の美しさだけでなく、地球科学史に残る大発見の舞台でした。1920年代、この玄武岩が今と真逆の向きに磁気を帯びていることが発見され、「地磁気は過去に逆転していた」という驚くべき事実が世界で初めて示されたのです。地球のN極とS極が入れ替わった時代があった——その証拠が、この六角形の柱に記録されていました。ついでに言うと、岩石名の「玄武岩」は、この玄武洞にちなんで名付けられた和名です。柱状節理の一名所が、岩石名と地磁気研究の両方の原点になっているわけです。


ほかにも、宮城県の材木岩(石英安山岩)、佐賀県の七ツ釜(玄武岩)など、全国に名所があります。滝や渓谷の岩壁が妙に規則正しく割れていたら、それも柱状節理かもしれません。山歩きのとき、岩の割れ方を少し気にしてみると発見が増えます。
世界の柱状節理と「六角形」の話
柱状節理は世界にもあります。最も有名なのは北アイルランドのジャイアンツ・コーズウェー。約4万本の玄武岩の柱が海へ続く世界遺産で、「巨人の石道」という伝説がつくほど整然としています。米国ワイオミングのデビルスタワーも、映画『未知との遭遇』で有名な巨大な柱状節理の岩塔です(こちらは玄武岩ではなく別の火成岩ですが、六角柱の理屈は同じです)。
最後に、よく言われる「柱状節理の六角形は、ハチの巣や雪の結晶と同じ六角形だ」という話について。見た目は確かに似ていますが、できる理由はそれぞれ違います。柱状節理は縮む力の解放、ハチの巣は最小の材料で敷き詰める効率、雪の結晶は水分子の並び方——原因は別物です。自然界に六角形が多いのは面白い偶然の一致で、「同じ仕組み」とまとめてしまうと少し乱暴。それでも、まったく違う現象が同じ形にたどり着くところに、自然の不思議があります。
柱状節理のよくある質問
柱状節理は火山の証拠?
ほぼそう考えて大丈夫です。溶岩や、地下でマグマが冷え固まった岩体が縮んでできるので、柱状節理があるということは、その場所に過去の火山活動(溶岩やマグマの貫入)があった証拠です。火山の分布については火山ランキングの記事もどうぞ。
柱はなぜ縦向きが多い?
ひび割れが冷却面に垂直に伸びるためです。溶岩は上(空気)と下(地面)から冷えるので、割れ目は横向きの冷却面に対して垂直=縦向きに成長します。ただし冷え方が複雑だと、柱が曲がったり放射状に広がったりして、扇のような見事な模様になることもあります。
節理と断層はどう違う?
どちらも岩の割れ目ですが、ずれているかどうかが違います。節理は割れただけでずれていない割れ目、断層は割れ目に沿って両側がずれ動いたものです。柱状節理は「冷えて縮んで割れただけ」なので、地震を起こす断層とは別物です(大断層については中央構造線の記事で解説しています)。
まとめ——規則正しさは「冷めた証拠」
柱状節理は、熱い溶岩が冷えて縮むときにできる規則的な割れ目で、力を効率よく逃がす結果として六角形の柱が多くなります。あの人工物のような整い方は、かつてここが灼熱の溶岩で、ゆっくり冷めていった証拠。東尋坊で日本海の荒波を眺めるのも、玄武洞で地磁気逆転の歴史に思いをはせるのも一興です。山や海辺で規則正しく割れた岩に出会ったら、「これは冷めた溶岩だな」と一目で見抜けたら、ちょっとかっこいいと思いませんか。
山の成り立ちをもっと知りたい方は、「山の地質」カテゴリの記事一覧もどうぞ。


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