日本の火山ランキング——大きさ・噴火の規模・噴火の頻度、3部門で読む火山の実力

山の地質

日本には111の活火山があり、この記事ではその「実力」を、山体の大きさ・過去の噴火の規模・噴火の頻度という3つの部門でランキングにしました。意外なことに、国(気象庁)による公式の火山ランキングは存在しません。2003年に活動度でA〜Cのランク分けが作られましたが、現在は使われていません。そこでこの記事では、公的なデータベースの数値だけを使い、出典を明示して3部門の順位表を作ります。

先に3部門の1位だけ言うと、大きさは富士山、噴火の規模は阿蘇、噴火の頻度は——これも富士山です。「優美な富士山は実は日本一の巨体で、日本一よく噴火してきた」。このギャップが、日本の火山を読む面白さの入口になります。

富士山山頂付近から見たご来光と雲海
富士山山頂直下のご来光。この黒い斜面の下に、日本一の体積548km³が沈んでいます。大きさ部門・頻度部門の二冠王です。

第1部門:日本一大きい火山はどれか?

結論:現存する山体の体積では富士山が約548km³で1位です。日本火山学会がまとめた「日本の第四紀火山カタログ」(1999)の数値で統一して順位を付けると、次のようになります。よく紹介される「富士山=約400km³」は気象庁の値で、資料により幅がありますが、どの資料でも富士山の1位は揺るぎません。

順位火山体積標高
1富士山約548km³3,776m
2八ヶ岳約369km³2,899m(赤岳)
3榛名山※約180km³1,449m
4鳥海山約105km³2,236m
5赤城山約100km³1,828m
6御嶽山約79km³3,067m
7伯耆大山約78km³1,729m
8吾妻山約77km³2,035m
9浅間山約75km³2,568m
10苗場山約65km³2,145m

出典は第四紀火山カタログ委員会編『日本の第四紀火山カタログ』(日本火山学会、1999)。※榛名山の値は山体だけでなく火砕流・火山灰などの噴出物込みのため、少し割り引いて見る必要があります。また伊豆大島や三宅島などの島の火山は海底からの体積で計上されるため(三宅島は約519km³)、陸の山とは別枠にしました。

なお御嶽山(6位)は、標高では富士山に次ぐ日本第2位の火山(3,067m)です。「もっと上では」と感じた方は正しい感覚で、高さと体積は別の勝負ということになります。見どころは2位の八ヶ岳です。標高では富士山に900m近く負けていますが、南北21kmに連なる山体の総量は約369km³で堂々の2位。しかも八ヶ岳は数十万年分の侵食で深く削られてこの値です。山頂が広大な湿原になっている苗場山が10位に入っているのも、「火山らしい形」と「火山の実力」が別物であることを教えてくれます。ちなみに当ブログでよく扱う立山(弥陀ヶ原火山)は約10km³。富士山1つで立山55個分という計算になり、富士山の異常さが際立ちます。

日本の火山ランキング3部門の上位火山の位置図
3部門の上位火山の分布。巨大噴火の給源(赤)が北海道と南九州に偏り、本州中部には「大きい山体」(青)が並ぶ——この分布自体が日本列島の地下構造を映しています(出典:国土地理院の地図を加工)。

第2部門:日本最大の噴火はどれか?

結論:過去約12万年で最大の噴火は、約9万年前の阿蘇4噴火です。産総研の大規模噴火データベースによると、噴出量は930〜1,860km³。現在の阿蘇の山々はこの噴火で山体が丸ごと吹き飛んだ「あと」に育った子世代で、東西18km・南北25kmのカルデラの縁が、失われた親の体格を今も示しています。

順位噴火(給源)年代噴出量(見かけ体積)
1阿蘇4(阿蘇カルデラ)約9万年前930〜1,860km³
2姶良・入戸(姶良カルデラ)約3万年前880〜1,000km³
3支笏(支笏カルデラ)約4.6万年前350〜390km³
4阿多(阿多カルデラ)約11万年前300km³超
5洞爺(洞爺カルデラ)約11万年前230〜310km³
6鬼界アカホヤ(鬼界カルデラ)約7,300年前170km³超

出典は産総研の大規模噴火データベース(姶良・支笏・阿多・洞爺・鬼界)と、阿蘇4については産総研の研究者による2020年の再評価論文(Takarada & Hoshizumi, Frontiers in Earth Science)。6位の鬼界アカホヤ噴火は、過去1万年あまり(完新世)に限れば世界最大の噴火で、鹿児島沖の海底カルデラから出た火山灰は東北地方まで届いています。縄文時代の南九州の文化を壊滅させた噴火として知られます。なお、こうした噴火を指す「破局噴火」という言葉は、実は学術用語ではなく小説発祥の造語です。研究の世界では「カルデラ形成噴火」「大規模火砕噴火」と呼びます。

日本の噴火の噴出量比較(対数スケール):御嶽山2014から阿蘇4まで
噴出量の比較。目盛りが10倍刻みであることに注意。御嶽山2014年と阿蘇4の間には約100万倍の開きがあります。

このグラフで伝えたいのは、江戸の町に灰を降らせた富士山の宝永噴火(約1.7km³)でさえ、カルデラ噴火の数百分の1という規模感です。そして左端の御嶽山2014年噴火は約0.001km³。阿蘇4の100万分の1です。それでも死者・行方不明者63名という戦後最悪の火山災害になりました。噴火の「規模」と「人的被害」はまったく別の問題である——このグラフはそれを冷厳に示しています。

御嶽山山頂直下、2014年噴火の痕跡が残る火口周辺
初秋の御嶽山山頂直下で撮った、噴火の痕跡が残る一帯。私がここに立ったとき、グラフ上では「ほぼゼロ」に見える噴火が現地に残した爪痕の生々しさに、数字の読み方を考え直させられました。

第3部門:最も頻繁に噴火してきた火山はどれか?

結論:過去1万年の噴火イベント数では、富士山が162回で1位です。産総研の「1万年噴火イベントデータ集」の収録イベントを火山ごとに集計しました(公表済みのランキング表があるわけではなく、当ブログでデータ集を基に数えた値です)。

順位火山過去1万年の噴火イベント数単純平均の間隔
1富士山162約60年
2阿蘇山(中岳)161約60年
3伊豆大島118約85年
4浅間山113約90年
5霧島山100約100年
6桜島69(連続噴火を1件と数えた値)

この表には正直な注意書きが2つ必要です。第一に、イベント数は「地質と古文書の記録に残った回数」なので、調査が進んでいる火山ほど多く数えられます。第二に、何年も続く連続噴火は1件と数えられます。桜島は1955年以降ほぼ毎年爆発的噴火を繰り返しており(多い年は年数百回)、「実際に噴火した回数」なら桜島が別次元の1位です。現在も噴火警戒レベル3(入山規制)が続く、日本で最も現役の火山です。

それを踏まえても、富士山の162回は強烈です。平均すれば約60年に1回。ところが最後の噴火(宝永)から約320年が経っています。過去1万年の履歴の中で、現在の静けさはかなり異例の部類です。「平均60年」は「60年ごとに噴く」という意味ではありませんが、少なくとも「富士山は噴火しない山」という感覚が歴史の実態と逆であることは、この数字が示す通りです。詳しくは富士山の地質で解説しています。

登山者はこのランキングをどう使うか

3つの表を眺めると、面白い事実に気づきます。大きさTOP10のうち、御嶽山・伯耆大山・浅間山・富士山など、半分以上が普通に登山道のある人気の山です。日本の登山文化は、世界的に見れば「活火山の上でレジャーをしている」文化です。私自身、御嶽山・焼岳・安達太良山・富士山と、気づけばランキング常連の火山ばかり登ってきました。火山の山は総じて眺めが良く、地形が劇的で、温泉があります。危険だから登らないのではなく、危険の性質を知って登る。そのために気象庁の噴火警戒レベルを出発前に確認し、火口周辺ではヘルメットを持つ。ランキングはその「知る」の入口として使ってください。

安達太良山の荒涼とした火山地形
安達太良山の稜線から望む沼ノ平火口方面。植生が戻らない荒涼とした景観は、この山が「現役」であることの何よりの証拠です。

ランキングの先へ——個々の火山を読む

この記事は数値の一覧ですが、一つひとつの火山には固有の物語があります。規模100万分の1の噴火が最悪の火山災害になった御嶽山、北アルプス唯一の活火山焼岳、体積7位ながら崩壊が止まらない伯耆大山、月面のような沼ノ平を抱く安達太良山。そもそもなぜ日本にこれほど火山が多いのかは、日本の山はなぜここにある?で解説しています。「山の地質」カテゴリで、山の成り立ちを地球規模で読み解いています。

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