カルデラとは何か——「山なのに巨大なくぼ地」ができる理由を図解でわかりやすく解説

山の地質

カルデラとは、火山の活動でできた「概ね直径2km以上」の巨大なくぼ地のことです(気象庁の定義)。ポイントは、その多くが爆発で吹き飛んでできた穴ではないこと。地下のマグマが一気に抜けて、地面が丸ごと下に抜け落ちてできた穴です。この記事では、カルデラと火口の違い、でき方の仕組み、日本のどこにあるかを、図解と地図でわかりやすく解説します。

「くぼ地」と聞くと小さな地形を想像しますが、スケールが違います。熊本県の阿蘇カルデラは南北25km。くぼ地の底には約5万人が暮らし、田畑が広がり、鉄道まで走っています。世界的に見ても「穴の中にこれだけ人が住んでいる」場所はまれです。まずはその風景から見てください。

阿蘇高岳の稜線から見下ろしたカルデラ床の田畑と集落、遠くに外輪山
阿蘇・高岳の稜線から。眼下の平地は「巨大なくぼ地の底」で、田畑と町が広がります。地平線まで続く低い山並みが、くぼ地を囲む縁(外輪山)です。

カルデラと火口は別物です

まず、よくある誤解から片付けます。富士山の山頂にある「お鉢」や、蔵王の御釜。あれはカルデラではなく火口です。火口は、マグマや火山ガスが噴き出す出口にできたくぼみのこと。気象庁の用語では、直径が概ね2kmを超えるくぼ地をカルデラと呼んで区別します。富士山の山頂火口は直径約800mなので、日本一の山でも「ただの火口」です。

富士山山頂の火口
富士山山頂の火口。直径約800mで、歩いて一周できます。これは「火口」であって、カルデラではありません。

違いは大きさだけではありません。火口が「噴き出した出口」なのに対し、カルデラの多くは「中身が抜けて、天井が落ちた跡」。成り立ちがまったく別物です。図で比べると、規模の差に少し笑ってしまうはずです。

火口とカルデラの大きさと成り立ちを比較した断面図解
火口とカルデラの比較(同じ縮尺)。火口は山頂の小さなくぼみ、カルデラは山ひとつ分が丸ごと沈んだ巨大なくぼ地です。

カルデラのでき方——地面ごと抜け落ちる

カルデラができる流れは、3コマで説明できます。①火山の地下数kmには、マグマがたまった大きな部屋(マグマだまり)があります。②巨大噴火が起きると、この部屋の中身が短期間で一気に地上へ噴き出します。③すると地下に巨大な空洞ができ、天井にあたる地面が支えを失って、山ごとズドンと抜け落ちる。この陥没した跡がカルデラです。

カルデラ形成の3段階を示す断面図解。マグマだまりに蓄積、大噴火で空になる、天井が陥没
カルデラができる3段階。教科書は「陥没」の一言で済ませますが、山の天井が抜けるというのは相当な事件です。

身近なものでいえばプリンです。カップの底にストローを差してプリンを吸い出したら、上の面は保てずに沈みますよね。あれが地面のスケールで起きる、と考えてください。阿蘇のカルデラを作った約9万年前の「阿蘇4噴火」では、930〜1,860km³ものマグマや火山灰が噴き出したと見積もられています。高温の火山灰と岩の流れ(火砕流)は約170km離れた山口県まで達しました。大阪から名古屋まで届く距離です。これだけの中身が抜ければ、天井も落ちます。

ちなみに、こうした巨大噴火のランキングは日本の火山ランキングの記事で詳しくまとめています。上位はすべてカルデラを作った噴火です。つまりカルデラとは「日本史上最大級の噴火の跡地リスト」でもあるわけです。

日本の主要カルデラはどこにある?

日本の大きなカルデラは、北海道と九州南部に集中しています。地図で見ると、その偏りがよくわかります。

日本の主要カルデラ8つの位置と実際の大きさを示した地図
日本の主要カルデラ。円は実際の大きさ(縮尺どおり)です。北海道と九州南部への偏りは偶然ではなく、地下のマグマのでき方の違いを映しています(出典:国土地理院の地図を加工)。
カルデラ場所大きさカルデラを作った主な噴火
屈斜路北海道東西26×南北20km(日本最大)約12万年前ほか
支笏北海道支笏湖を含む円形のくぼ地約4.6万年前
洞爺北海道湖の直径 約10km約11万年前
十和田青森・秋田直径 約11km約1万5千年前ほか
箱根神奈川南北12×東西8km複数回の噴火の集合
阿蘇熊本南北25×東西17km約9万年前(阿蘇4)
姶良鹿児島東西23×南北17km約2万9千年前
鬼界鹿児島沖の海底東西23×南北16km約7,300年前

サイズと年代は気象庁の各火山解説および産総研の大規模噴火データベースに基づきます。見どころを3つ。日本最大は阿蘇ではなく北海道の屈斜路カルデラで、くぼ地にたまった水が日本最大のカルデラ湖・屈斜路湖です。鹿児島の姶良カルデラは今、鹿児島湾の北半分になっていて、その縁で噴煙を上げ続けているのが桜島。そして鬼界カルデラは約7,300年前、縄文時代に大噴火した海底カルデラです。十和田湖も洞爺湖も、観光名所の正体は巨大噴火の跡地——日本人は知らずにカルデラで温泉に入り、湖畔でソフトクリームを食べています。

なぜ北と南に偏るのか——カルデラができる条件

地図を見て「ずいぶん偏っているな」と思った方、いい着眼点です。この偏りは偶然ではありません。巨大なカルデラができる条件は2つあります。ひとつ目はマグマの供給ラインの上にあること。マグマは、日本列島の下に沈み込んだプレートが深さ100km前後に達した場所の真上で生まれます。だから火山は列島に沿った細い帯の上にしか並びません。

ふたつ目が本題で、地面が「引っ張られ気味」の場所であることです。地殻が東西から押し縮められている場所では、マグマは大きく貯まる前に細い通り道から漏れ出し、地表に高く積み上がります。富士山のような高い山になるコースです。逆に地面が引っ張られている場所では、地下に巨大なマグマだまりの「居場所」ができて、中身をため込めるうえ、天井も抜けやすい。九州南部はまさに地面が引き裂かれつつある地帯で、その裂け目に沿って姶良・阿多・鬼界のカルデラがほぼ一直線に並びます。東北海道も同じタイプの場所です。

押し縮められる場所では高い成層火山、引っ張られる場所では巨大マグマだまりとカルデラができることを示す比較断面図解
同じ火山でも、地殻の力のかかり方で行き先が分かれます。「高い山は押される場所に、凹んだ山は引っ張られる場所に」が大きな目安です。

つまり富士山とカルデラは、火山としての優劣ではなく「地面がどう力を受けているか」の違いです。日本一高い山(富士山)と、桁違いの巨大噴火の跡(カルデラ群)が同じ島国に同居しているのは、日本列島が場所によって押されたり引っ張られたりしている証拠でもあります。

阿蘇カルデラには山手線がすっぽり入る

数字だけでは大きさが伝わらないので、東京の山手線と同じ縮尺で重ねてみました。山手線の内側は南北約12km・面積約63km²。阿蘇カルデラは南北25km・面積約350km²なので、山手線の内側がまるごと入って、まだ5個分以上の余裕があります

阿蘇カルデラの地形図に同縮尺の山手線を重ねた比較図
阿蘇カルデラに山手線(緑の線・同縮尺)を重ねた図。都心の通勤圏が、くぼ地の中に楽々収まります(出典:国土地理院の地図を加工)。

この中に阿蘇市など約5万人が暮らし、JR豊肥本線と南阿蘇鉄道が走り、学校も温泉街もあります。9万年前の巨大噴火の「抜け跡」が、今は5万人の生活圏。山手線の内側とどちらに住みたいかは好みの問題ですが、家賃と眺めはカルデラ側の圧勝です。

登山者はカルデラの「縁」と「子ども」を歩いている

私が阿蘇を登ったのは5月の連休でした。最高峰の高岳(1,592m)から見た風景が、この記事を書いている原点です。足元には今もガスを噴き上げる中岳の火口。その先に、火山らしい荒々しい大地が突然終わり、定規で引いたように平らな土地と町が始まり、さらに遠くに壁のような山並みがぐるりと連なる。「自分は巨大な穴の中央に立っている」と気づいた瞬間、鳥肌が立ちました。

阿蘇高岳から見た中岳火口の噴気と、遠方に連なる外輪山
高岳直下から。手前で噴気を上げるのが中岳火口、地平線の山並みが外輪山です。火口とカルデラの「親子2世代」を一枚で見られるのが阿蘇の贅沢なところ。

実は、阿蘇五岳(高岳・中岳など)は9万年前の大陥没の後にくぼ地の中で新しく育った「子ども世代」の火山です。つまり阿蘇登山とは、巨大な穴の中で子火山に登る行為。箱根の駒ヶ岳や神山も同じ構図です。一方、縁を歩くコースもあります。阿蘇の外輪山・大観峰や、十和田カルデラの縁にそびえる御鼻部山などは「天井が抜け残った部分」の上です。

ひとつ注意したいのは、名前に「カルデラ」と付いていても別物がいることです。立山の南にある立山カルデラは、陥没ではなく侵食(水や崩壊で削られること)で広がった東西6.5kmのくぼ地で、成り立ちが違います(立山カルデラ砂防博物館の解説による)。「カルデラ=必ず陥没」ではない、と覚えておくと地形図の見方が一段深くなります。

カルデラのよくある質問

日本最大のカルデラはどこ?

北海道の屈斜路カルデラです(東西26km・南北20km、気象庁による)。有名な阿蘇カルデラは南北25km・東西17kmで、規模はほぼ互角の2番手です。

世界最大のカルデラは?

インドネシア・スマトラ島のトバカルデラが最大級で、約100×35km(米国地質調査所USGSによる)。約7.4万年前の噴火でできました。米国のイエローストーンも約85×45kmの巨大カルデラです。屈斜路の4倍前後という桁違いのスケールです。

カルデラ湖と火口湖はどう違う?

くぼ地の正体が違います。カルデラに水がたまったのがカルデラ湖(屈斜路湖・十和田湖・洞爺湖など)、火口にたまったのが火口湖(蔵王の御釜など)。目安は大きさで、直径2kmを超えるくぼ地ならカルデラです。

カルデラの火山は今も噴火する?

します。阿蘇の中岳は現役で噴火を繰り返していますし、姶良カルデラの縁にある桜島はほぼ毎年噴火しています。カルデラを作るような巨大噴火はまれですが、火山への登山では気象庁の噴火警戒レベルの確認が欠かせません。火山と登山の付き合い方は御嶽山の記事でも書いています。

まとめ——「凹んでいる山」は最大級の火山の証

カルデラとは、巨大噴火でマグマだまりが空になり、地面ごと抜け落ちてできた直径2km以上のくぼ地です。高くそびえる山より、大きく凹んだ山のほうが「強い火山」だった——この逆転の発想を持って地形図を眺めると、十和田湖も箱根も阿蘇も、まったく違う顔に見えてきます。次に温泉やドライブでカルデラを訪れたら、ぜひ縁の山並みを探してみてください。それが9万年前の「抜けた天井」の名残です。

山の成り立ちをもっと知りたい方は、「山の地質」カテゴリの記事一覧もどうぞ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました