日本最大のカルデラは屈斜路——阿蘇との違いと主要9カルデラの大きさを一覧で比較

山の地質

カルデラは、巨大な噴火でマグマが一気に抜けたあと、地面が陥没してできた大きなくぼ地です。日本には直径2kmを超えるカルデラが数十あり、その多くが湖や盆地として観光地になっています。日本最大は熊本の阿蘇ではなく、北海道東部の屈斜路カルデラ(東西約26km)です。

この記事では、日本の代表的なカルデラを「大きさ・できた年代・現在の姿」で一覧にし、地図で位置を確かめたうえで、実際に歩けるカルデラをいくつか紹介します。カルデラの基本的な仕組み(なぜ陥没するのか)はカルデラとは何かで図解していますので、初めての方はそちらからどうぞ。

カルデラができる3段階を示す断面図。噴火前・巨大噴火・陥没して現在
カルデラは山が噴き飛んだ跡ではなく、マグマが抜けた地下の空洞に地表が落ち込んでできたくぼ地

日本の主なカルデラはどこにある?

日本の主要カルデラの位置と実サイズを示した地図
日本の主要カルデラの位置。円はおおよその実サイズ。北海道と九州に集中している(地図:国土地理院)

地図を見ると、巨大カルデラが北海道と九州に偏っていることが分かります。本州中部にも御嶽や箱根などの火山はありますが、「街がまるごと入る」級の超巨大カルデラは南北の端に集中しています。これはプレートの沈み込み方や地殻の性質の違いを反映したもので、日本列島の火山の個性が地域で違うことを示す好例です(活火山とは何か)。

代表的なカルデラ一覧——大きさと年代で比べる

カルデラ場所大きさ(長径)主な形成時期現在の姿
屈斜路北海道約26km(日本最大)約12〜3万年前屈斜路湖・川湯温泉
阿寒北海道約24km約21〜1万年前阿寒湖・雌阿寒岳
支笏北海道約12km約4万年前支笏湖・樽前山
洞爺北海道約10km約11万年前洞爺湖・有珠山
十和田青森・秋田約11km約5.5万年前〜十和田湖
箱根神奈川約12km約23〜4万年前芦ノ湖・大涌谷・温泉街
阿蘇熊本約25km約27〜9万年前カルデラ内に約5万人が居住
姶良鹿児島約23km約3万年前鹿児島湾北部・桜島
鬼界鹿児島沖約23km約7,300年前海底(薩摩硫黄島)
日本の代表的なカルデラ。大きさ・年代は産総研・気象庁等の公表資料による概数

表で見ると、「観光地の名前」と「巨大噴火の跡」がそのまま重なっていることがわかります。屈斜路湖も支笏湖も洞爺湖も十和田湖も芦ノ湖も、全部カルデラの水たまりです。日本人は巨大噴火の跡地を、温泉とボート遊びの名所として使いこなしていることになります。

歩いて分かるカルデラのスケール

数字の「26km」より、現地の風景のほうがスケールは伝わります。屈斜路カルデラでは、外輪山の展望台から対岸の壁がかすんで見えました。「あの霞んでいる山まで全部、ひとつの噴火の穴の中」という説明は、現地で聞いても信じがたい規模です。

屈斜路湖の砂湯、湖畔の砂浜から湯気が上がる
屈斜路湖の砂湯。湖畔の砂を掘ると温泉が湧く。日本最大のカルデラは今も地下に熱を蓄えている

支笏カルデラでは、カルデラ縁に後から生えた樽前山に登りました。山頂部には今も噴気を上げる溶岩ドームが鎮座し、眼下には支笏湖の青。カルデラを作った噴火(約4万年前)のあとも火山活動が続いていることを、一度の登山で見渡せる場所です(屈斜路カルデラと硫黄山)。

樽前山の山頂部から見下ろす支笏湖
樽前山から見下ろす支笏カルデラ。湖の輪郭がそのまま陥没の輪郭です

阿蘇は「住んでいるカルデラ」として世界的に有名です。カルデラの底に約5万人の暮らしと鉄道と田畑があり、外輪山の内側で日常が営まれています。中岳の火口見学とセットで歩くと、破局噴火の跡地と現役の火口を同じ日に見られます(オンネトー湯の滝のような、カルデラ周辺の火山の恵みも北海道側にはあります)。

阿蘇カルデラの底に広がる田畑と町並み、奥に根子岳
阿蘇カルデラの内部。約9万年前の巨大噴火の「穴の底」に、田畑と町がそのまま収まっている

歴史時代にも動いた——十和田と箱根

「カルデラを作った巨大噴火は大昔の話」と思いたくなりますが、そうでもありません。十和田カルデラでは平安時代の915年に大噴火が起き、火山灰は東北一帯に降り積もりました。過去2,000年間の日本国内では最大級の噴火とされています。青森と秋田の県境の静かな湖は、日本の歴史時代に噴火した「現役」です。

箱根カルデラも、約3,000年前の水蒸気爆発などを経て現在の仙石原や芦ノ湖の風景を作り、2015年には大涌谷で小規模な噴火が起きて入山規制が敷かれました。年間2,000万人が訪れる温泉地は、カルデラの中で今も呼吸している火山でもあります。観光地としてのカルデラと、監視対象としてのカルデラは、同じ場所の昼と夜のような関係です(規制の仕組みは火山で登れなくなる百名山)。

最恐は海の中——鬼界カルデラ

一覧の中で最も新しい巨大噴火が、約7,300年前の鬼界カルデラ(鹿児島沖の海底)です。この「アカホヤ噴火」は過去1万年間で地球最大の噴火とされ、火砕流は海を渡って九州南部に達し、当時の縄文文化に壊滅的な影響を与えたと考えられています。火山灰は東北地方まで届き、今も地層の年代を決める「ものさし」として使われています。

カルデラの楽しみ方は「縁を歩く」

カルデラ観光の定番は湖畔や火口見学ですが、地形を味わうなら外輪山——陥没の縁に残った山の輪——を歩くのが一番です。樽前山では、カルデラの縁に立つと、片側に支笏湖の青、反対側に太平洋という二択の絶景になります。阿蘇なら大観峰などの外輪山展望所から、カルデラの壁と底の全体を一望できます。「いま自分は巨大な穴の縁に立っている」という自覚が持てた瞬間、ただの湖の景色が地質のスペクタクルに変わります。

雌阿寒岳のように、カルデラ地域の火山は現役の噴気や火口湖を持つものが多く、登山の際は気象庁の噴火警戒レベルの確認が前提になります。穴の縁は、絶景の縁であると同時に監視対象の縁でもあります。

この規模の噴火は数千年〜数万年に一度という頻度ですが、ゼロではありません。日本列島に住むことは、世界有数の火山の恵み(温泉・地形・土壌)と、低頻度・巨大リスクを同時に引き受けることだ——カルデラの一覧表は、そのことを静かに教えてくれます。日本の噴火の規模比較は日本の火山噴火ランキングでまとめています。

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