娘と登る立山・雄山3,003m——半日で「3つの地球の力」に出会える最高の初アルプス

登山記録

立山・雄山(おやま、3,003m)は、子どもの「初めての3,000m峰」に日本でいちばん向いている山だと思います。ケーブルカーとバスを乗り継げば標高2,450mの室堂まで運んでもらえて、そこから山頂までの標高差はわずか550m。それでいて頂上に立てば、視界いっぱいに北アルプスの大パノラマが広がります。9月末の紅葉最盛期、小学生の娘と登ってきました。

そしてこの山のもう一つの顔が、「地球の力の見本市」であることです。歩き出しから下山まで、火山・氷河・隆起という山をつくる3つの力の証拠が次々に現れます。親子登山の記録とあわせて、その見どころを紹介します。

草紅葉に染まる室堂平の全景。みくりが池と地獄谷の噴気、雷鳥沢方面の山々
一ノ越への登りから振り返った室堂平。草紅葉の絨毯の中に、みくりが池と地獄谷の白い噴気が見えます。

ルート概要——室堂から一ノ越経由で往復約4〜5時間

ルートは王道の室堂(2,450m)→一ノ越(2,700m)→雄山(3,003m)の往復です。室堂から一ノ越までは石畳が敷かれた遊歩道のような道で、傾斜も穏やか。問題はその先で、一ノ越から山頂までは岩がゴロゴロした急斜面になります。標高差300mの岩場は、下から見上げると娘が一瞬黙るくらいの迫力がありますが、登り下りのルートが分けられていて、三点支持を教えながら登ればコースタイムどおりに小学生でも登り切れました。本人いわく「アスレチックみたいで楽しい」。子どもは岩場のほうが燃えるようです。

立山周辺の地形図。室堂・一ノ越・雄山の位置関係
室堂周辺の地形図。出典:国土地理院
一ノ越へ続く石畳の道を歩く子どもの後ろ姿。周囲は紅葉の始まった立山の山肌
一ノ越へ続く石畳の道。険しさゼロで始まるのに、周りはもう3,000m級の景色です。子どもの足でも歩きやすい道が続きます。

9月末の立山は紅葉の最盛期で、室堂平は草紅葉の黄金色、斜面はナナカマドの赤と、どこを切り取っても絵になります。そのぶん人も多く、雄山直下の岩場は渋滞気味でした。子連れの場合、朝いちばんのバスで入って昼過ぎに下りてくる計画にすると、渋滞も午後の天候悪化も避けやすいです。

歩きながら出会う「3つの地球の力」

立山のすごさは、ルート上の見どころがそのまま地学の教材になっていることです。図にまとめるとこうなります。

室堂から雄山への断面図。みくりが池・地獄谷・一ノ越・山崎カールの位置と、火山・氷河・隆起の3つの力
室堂〜雄山ルートの断面。半日の行程に火山・氷河・隆起の証拠が全部詰まっています。

①火山の力。室堂平自体が、かつての噴火で流れ出た溶岩がつくった台地です。みくりが池は水蒸気爆発の火口跡に水が溜まった池で、その隣の地獄谷からは今も轟々と噴気が上がっています。立山(弥陀ヶ原火山)は気象庁が常時観測する活火山で、「3,000m峰に登ったら火山ガスの匂いがした」という体験は、考えてみればかなり貴重です。

②氷河の力。雄山の山頂直下、西斜面には椀のようにえぐれた地形があります。これが山崎カール。氷期に氷河がスプーンのように山肌を削った跡(カール)で、1905年に地理学者の山崎直方がここを調査して「日本にも氷河時代があった」ことを初めて示した、日本の氷河研究発祥の地です。国の天然記念物にも指定されています。カールという地形の仕組みは氷河地形の記事で解説しています。そして立山連峰には、現在も動いている本物の氷河(御前沢氷河・内蔵助氷河など)が残っています。詳しくは日本の氷河は9つあるの記事をどうぞ。

③隆起の力。そもそもこの一帯が3,000mの高さにあること自体が、プレートに押されて山脈が持ち上がり続けている証拠です。娘には「この山、今もちょっとずつ背が伸びてるんだよ」と伝えたところ、「私と一緒だ」と返されました。うまい。

雄山山頂——3,003mの上の神社

雄山から北へ続く立山の主稜線。岩の峰と青空
雄山から北へ続く主稜線。この稜線の東側に、いまも動く氷河が隠れています。

山頂には雄山神社の峰本社が建っていて、最高点の岩の上でお祓いを受けられます。3,003mの頂で神主さんの太鼓の音を聞くのは、なかなか他では味わえない体験です。晴れていれば剱岳や薬師岳、遠く槍ヶ岳まで見渡せます。娘の感想は「山の上に神社があるのすごい。だれが木を運んだの?」——正直、私も同じことを考えていました。信仰の力おそるべし。

立山の下山路から室堂平を見下ろす。みくりが池と紅葉の山肌、歩く子どもの後ろ姿
下山路からは室堂平を一望。みくりが池の青、草紅葉の金色、遠くには富山平野まで見えます。この景色を見ながら下れるので、子どもの足取りも軽くなります。

下山は同じ道を戻り、余力があったのでみくりが池を一周してから帰りました。火口跡の池に立山の稜線が映る様子は、火山と氷河と隆起の合作を1枚の鏡で見るようで、この山のまとめとして完璧な締めくくりです。

室堂までの道のりも「本編」です

立山黒部アルペンルートで室堂に入ること自体が、子どもにとっては一大イベントです。私たちは富山側の立山駅から入り、ケーブルカーと高原バスを乗り継ぎました。バスの車窓では、標高が上がるにつれて森が低くなり、やがて森林限界を越えて草原に変わる——教科書で習う「植生の垂直分布」が、50分の乗車で早送り再生されます。娘への地学教育のつもりが、本人は「バスの運転手さんすごい」に夢中でした。まあ、それも正しい。

室堂ターミナルには売店も食堂もあり、水は「立山玉殿の湧水」が汲み放題。3,000m級の登山口としては日本一整った環境なので、親子登山のハードルを大きく下げてくれます。運が良ければハイマツ帯で雷鳥に会えることもあります。天気が下り坂の日ほど出やすい鳥なので、曇り空でもがっかりする必要はありません。

なお紅葉最盛期の週末はアルペンルートの乗り物が大行列になります。私たちは始発近くの便で入りましたが、それでも立山駅のケーブルカーは整理券方式でした。子連れなら前泊か、平日を強くおすすめします。行列で子どもの体力ゲージを削ってしまうのがいちばんもったいないので。

親子登山メモ

コースタイム室堂→一ノ越 約1時間/一ノ越→雄山 約1時間(子連れは1.5倍を想定)
核心部一ノ越から上の岩場。三点支持ができれば小学生でも可
注意点3,000mなので天候急変と高山病に注意。無理なら一ノ越までで十分絶景
楽しみ雄山神社のお祓い、みくりが池、下山後のソフトクリーム

立山の成り立ちをもっと深く知りたい方は立山の地質解説の記事を、ほかの山行記は「登山記録」カテゴリをどうぞ。

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