活断層は、これまでに何度もずれ動き、これからもずれ動くと考えられている地下の割れ目です。地震のニュースでは必ずと言っていいほど名前が出てきますが、そもそも普通の断層と何が違うのか、なぜ日本にこれほど多いのかは、あまり説明されません。
活断層を理解するポイントは3つあります。ひとつは、日本に2,000以上もある理由が、列島を押しているプレートの動きにあること。ふたつめは、その分布が日本中に均等ではなく、はっきりと偏っていること。そして3つめは、活断層が地下に隠れているだけでなく、地表の地形として見える形で残っているということです。3つめは登山とも関係があります。私たちが歩いている谷や峠の一部は、断層がつくったものです。
活断層とは何か——くり返しずれてきた傷跡
地下の岩盤に割れ目ができ、その両側がずれたものを断層と呼びます。断層そのものは日本中の地下にあり、数え切れません。何億年も前に一度ずれたきり、その後まったく動いていないものも大量にあります。
このうち、地質学的に見て最近の時代にくり返し動いてきて、これからも動くと考えられるものが活断層です。地震調査研究推進本部(地震本部)は活断層を「最近の地質時代にくり返し活動し、将来も活動することが推定される断層」と定義しています。この「最近」がどれくらいかについては、約200万年前以降とする立場と、数十万年前以降とする立場があり、研究者によって幅があります。いずれにしても、人間の感覚からすると気が遠くなる長さです。
ここで大事なのは、なぜ同じ場所がくり返し動くのかという点です。理由は単純で、一度割れた面は周りより弱いからです。板を一度折ってから接着しても、次に力を加えたとき折れるのはたいてい同じ場所です。地下でも同じことが起きています。だから活断層は、過去に動いた記録がそのまま将来の予測材料になります。
ただし、そのくり返しの間隔は数千年から数万年に一度です。前回の地震から千年経っていても、地質の時間感覚ではまだ「さっき動いたばかり」の範囲に入ります。
なぜ日本には2,000以上もあるのか?
日本列島が、4枚のプレートに押し合われる場所にあるからです。
東からは太平洋プレートが、南からはフィリピン海プレートが、それぞれ日本列島の下へ沈み込んでいます。沈み込む板は列島を押し続けるので、陸地の岩盤には常に力がかかります。押され続けた岩盤はどこかで耐えきれなくなり、弱い面に沿ってずれます。これが内陸で起きる地震です。地震本部によれば、日本の陸域とその周辺の海域には2,000を超える活断層があるとされています。
2,000すべてを同じ精度で調べるのは現実的ではないので、地震本部は規模が大きく社会への影響も大きいものを選び、重点的に調査しています。これが主要活断層帯で、当初98だったものが見直され、現在は114の断層帯が対象になっています。ニュースで名前を聞く断層帯の多くはこの114に含まれます。
山を登る人にとっては、この「押され続けている」という状態こそが山の存在理由でもあります。押されて盛り上がった結果が山脈であり、押されて耐えきれずずれた結果が地震です。同じ力の、出力先が違うだけの話です。
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地図に浮かぶ「動く場所」の法則
活断層は日本中に均等に散らばっているわけではありません。分布にははっきりとした偏りがあり、そこには理由があります。
密度がもっとも高いのは、中部地方から近畿地方北部にかけての一帯です。この地域は山地と盆地が交互に並び、その境目に沿って断層が発達しています。琵琶湖や京都盆地、奈良盆地といった平地が山に囲まれて点在するあの地形は、断層運動がつくったものです。
西日本では、中央構造線という日本最大級の断層に沿って帯状に並びます。四国から紀伊半島、そして長野県まで、1,000km以上にわたって列島を東西に貫く線です。
九州中部はやや事情が違います。ここは押されているというより、南北に引っ張られています。別府から阿蘇を経て島原へ、東西に細長い低地が並ぶのはそのためで、この引っ張りの力が地面を裂き、断層をつくっています。2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震で動いたとみられる日奈久断層帯も、この動きの中にあります。
逆に、北海道北部などは活断層の密度が低い地域として知られています。密度が低いことと地震が起きないことは同じではありませんが、少なくとも「日本ならどこでも同じように活断層がある」わけではないことは、地図を見れば分かります。
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活断層の地震は、南海トラフの地震と何が違うのか?
大きな違いは、震源の深さとくり返しの間隔です。

活断層による地震は、地下5〜20kmという浅い場所で起こります。震源が浅いぶん、真上の地表が強く揺れます。規模を示すマグニチュードが同じでも、深い地震より被害が大きくなりやすいのはこのためです。地震の規模としては海溝型より小さくても、震源の真上にある町では激しい揺れになります。
一方、南海トラフのような海溝型地震は、海のプレートと陸のプレートの境界がずれるものです。震源域が広く、揺れは長く続き、津波を伴います。くり返しの間隔は100〜200年程度と短く、歴史の記録に何度も登場します。
この「間隔の差」が、活断層のやっかいなところです。海溝型は数百年に一度なので、前回からの経過年数がある程度の目安になります。しかし活断層は数千年から数万年に一度です。人間が文字を持ってからの歴史がせいぜい数千年であることを考えると、大半の活断層は「文字が生まれる前に最後に動いたきり」ということになります。記録が残っていないので、地面を掘って過去のずれを直接調べるしかありません。
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活断層は山でどう見えるのか?
地形として見えます。活断層は地下に隠れた存在のように語られがちですが、実際には地表に痕跡を残していて、慣れると地形図の上でも現地でも判別できます。

分かりやすいのは、谷が不自然に一直線に伸びている場所です。断層の面は周囲の岩より砕けていて弱いため、水に削られやすくなります。その結果、断層に沿って細長い谷ができます。次の地形図は、長野県の分杭峠から大鹿村へ南北に伸びる谷です。

山が複雑に入り組んでいるなかで、ここだけが直線です。国道152号もこの谷をたどっています。これが中央構造線に沿う谷で、大鹿村にはこの断層を直接観察できる露頭があり、国の天然記念物になっています。
私はこの谷を、東側の稜線から見たことがあります。南アルプスの三伏峠は標高約2,580mで、日本一高い峠とされています。ここから西へ下ると、その先が大鹿村です。

登っているときは、ただ長い登りだとしか思っていませんでした。地図を見て、自分が越えてきた尾根と下っていく谷が別々の岩でできていて、その境目が日本を東西に分ける大断層だと知ったのは、帰宅してからです。峠で撮った写真には標識しか写っていません。
もうひとつ分かりやすいのが、断層に沿ってできた細長い湖です。長野県大町市の木崎湖・中綱湖・青木湖は、糸魚川静岡構造線という別の大断層に沿って一列に並んでいます。地図で見ると3つの湖が縦に整列していて、自然にできた配置とは思えない規則正しさです。

このほか、山から平野へ張り出した尾根の先が、切りそろえたように三角形の崖になっている場所や、尾根の稜線が断層のところだけ低くくぼんでいる場所も、断層の痕跡です。登山道の峠が妙に低く整っているとき、そこが断層である可能性はそれなりにあります。峠が歩きやすいのは地面が砕けているからで、ありがたいような、そうでもないような話です。
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活断層の地図に線がない場所も、安全とは限らない
安全とは言えません。活断層の地図に線が引かれていない場所でも、大きな地震は起きています。
2000年の鳥取県西部地震はマグニチュード7.3でしたが、事前に活断層として知られていた場所ではありませんでした。2008年の岩手・宮城内陸地震も、地表にはっきりした断層のずれが現れにくいタイプでした。地下で断層が動いても、その上を軟らかい堆積物が厚く覆っていると、地表の地形には痕跡が残りません。地形から探す方法には、原理的にこの限界があります。
産総研の活断層データベースの説明では、単独で大地震を起こすような規模の陸上の活断層は、おおむねすべて発見されているとされています。その一方で、沿岸部や火山地域、そして活動度の低いものや短いものについては、まだ確認できていないものが存在する可能性があるとも書かれています。海の底も同じで、陸地のように歩いて調べるわけにはいきません。
つまり活断層の地図は、「危険な場所の一覧」ではなく「これまでに見つけられた場所の一覧」です。線が引かれている場所は確かに警戒が必要ですが、線がないことは安全の証明にはなりません。
活断層を地形として読む
活断層は、日本列島が4枚のプレートに押され、引っ張られ続けていることの帰結です。列島が押されて盛り上がった結果が山であり、耐えきれずにずれた結果が内陸の地震です。山を登る行為と地震のニュースは、地下では同じ力につながっています。
そして活断層は、地下に隠れているだけの存在ではありません。一直線の谷、整列した湖、不自然に低い峠として、地表に出ています。登山地図を眺めるとき、「この谷はなぜまっすぐなのか」と一度考えてみると、地形の見え方が変わります。何万年もかけて動いてきた線の上を、私たちは歩いています。
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参考にした資料
地震調査研究推進本部「活断層」「主要活断層帯」/産業技術総合研究所 活断層データベース/国土地理院 地理院タイル(地形図)/気象庁 地震情報。地形図は地理院タイルをもとに作成し、地点の座標は国土地理院の地名検索によるものです。



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